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西日本新聞[日曜版]Leaf 2015年12月6日掲載

プログラムが進むにつれ、参加者の表情がみるみる明るくなり、楽しげな笑い声が聞こえてくる。ここは、地域住民を対象に「ケアビクス」が行われた福岡県糸島市の公民館。
瀧口晶恵さんは、椅子に座ったままで有酸素運動を行うケアビクスを通して、心と体の健康づくりに取り組んでいる。

日本ケアビクス代表 瀧口晶恵さん(福岡市早良区)

たきぐち・あきえ 福岡市生まれ、日本ケアビクス代表取締役。福岡県内を中心に、熊本、広島、岐阜、岡山、北陸3県(石川、富山、福井)などで「ケアビクス普及支導員」を養成する他、介護施設や健康教室で指導をしている。

 

●有酸素運動を行いつつ脳トレも

生活習慣病の予防だけでなく、転倒防止や脳血管疾患の予防、認知症の予防改善など、有酸素運動には多くの効果があるという。
しかし、高齢になり、体力的に自信をなくした人が運動を始めるには、きっかけと勇気が要ることだろう。

高齢者が無理なく取り組めるケアビクスは、瀧口さんが1997年から提案・普及活動を続けている、椅子に座って有酸素運動を行いながら、認知機能もトレーニングするエクササイズだ。

愛知県にある国立長寿医療研究センターが、軽度認知障害と診断された100人を「運動プラス頭を使う」グループと「健康講座を受ける」グループに分け、半年間大規模な実験を行った。
「この実験で運動プラス頭を使ったグループの方が脳の萎縮を防ぎ、記憶力が改善したという結果が得られました。ケアビクスは手足の動きを止めずに、エクササイズ中も会話をしていきます。会話も頭を使う大切なツールですから」

 

●体調を見ながら運動強度を調整

ケアビクスでは、瀧口さんは言葉がけだけでなく、表情豊かに分かりやすいジェスチャーを交えながら、参加者とコミュニケーションを取り、モチベーションを高める。その一方で顔色や体調を見ながら、さりげなく運動強度を調整している。

市や町の健康づくり事業で、エアロビックフィットネスインストラクターとして高齢者と接する中、ケアビクスを考案した瀧口さん。
「認知症の方とも、45分間のプログラムを行います。言葉でのコミュニケーションは取りづらくても、動きを通してその瞬間・空間を共有し、共感することでお互いの間に感じるものが生まれ、ハッピーになれます」

・福岡県糸島市で行われている「しあわせ教室」で指導する瀧口さん。この日の最高齢者は95歳
・空気を抜いて握りやすくしたスモールボールなども使って、ゲーム感覚を取り入れながらエクササイズ
・2006年には、ハンガリーのペスフレーム大学で学生を前にケアビクスを発表

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